2017年12月29日

オルフィナ・グレイ・メーン4 秘書官の朝


オルフィナ・グレイ・メーンの朝は早い。起床して身支度を整えると、臙脂色の制服を着用してグレイ・メーンの屋敷を出て雲地区へ向かう。



バトル・ボーンのイドラフの差し金で散々彼女の身体を弄んだ帝国軍人たちは、何のつもりか知れぬまま、あくる日にはオルフィナを正式にホワイトラン方面軍の秘書官に任命する手続きを行い、首長バルグルーフにまで話を通していった。もはや何の反論をする気力もないうちに、彼女が果たすべき忌まわしい義務と職責が決められていったのだ。
我に返ってその内容に身体が震えるほどの後悔を覚えても後の祭りであった。……それに帝国軍から支払われることになった俸給は、「バナード・メア」のウェイトレスで得る給料とは比べ物にならないほど高額であり、グレイ・メーンの家を支え盛り返してゆかねばならない彼女は、その魅力に抗うことができなかった。



2017年12月20日

アワビ


その日、ドーンスターの街の裏手の岩山から、人相の悪い二人の男が、突然姿を現した。入江の近くに停泊した海賊船から、人目につかないように山の裏手を伝ってきた海賊たちであった。



宿屋「ウィンドピーク」までの僅かな距離を一気に突撃してきた男たちは、店先から畑に向かおうとしていた従業員の女に反り返った刀を突きつけた。


2017年12月3日

カトリア4 その後


カトリアがアルクンザムズの断崖から振り落とされて命を落とした後、次の訪問者はわすか数日後にやってきた。


黒革に身を包んだ男と金糸で縫い取られた装束をまとった小柄な女の二人組は、警告の声に歩みを緩めることはいっさいなかった。
そこでカトリアは、自らの持つ情報を提供してエセリウムの発掘を託してみようと思い、彼らの前に姿を現したのだった。