2015年5月23日

灰色地区4


リッケ特使付きのメイドを先輩と交代していったんウィンドヘルムに戻ったアベンタス・アレティノは、もはや住む者もいなくなった我が家の整理をしていた。
整理といっても家宝の銀器の皿以外にはろくな家財もなく、あっという間にやる事がなくなってしまう。


- それにしても、うちの物ってこんなに少なかったっけ?

そんな疑問も今となってはさして気にもならない。
やがて買い物をしようと思い立ち、街へ出た。


その帰り道。
アレティノは一人のダンマーの少女と出会った。


夕暮れのウィンドヘルムの街路で、アレティノはその少女と正面からばったりと向かい合うかたちとなった。
ダンマーを初めて見たわけではなかったが、この少女を見かけるのは初めてだと思った。アレティノと背丈はそれほど変わらず、丸みのある身体つきをしていたが、あまりに怯えたその様子からか不思議と華奢に見えた。
暗青色の肌に真っ赤な瞳。その瞳がアレティノを必死の面持ちで凝視している。まるで目をそらしたらその瞬間にパクリと食べられてしまうと思い込んでいる小動物みたいだった。


お互い足が止まっている。気まずいことこの上ない空気に耐えかねてアレティノが話しかけた。

「あのさ……」


「嫌! お願い、乱暴しないで! 許して!」

ダンマー少女の叫び。目に涙まで溜めている様にも見える。
唖然とするアレティノ。構わず叫び続ける少女。


「おじさんの言いつけで買い物に出ただけなの! あなたの通り道を邪魔するつもりなんてなかったの! だからお願い、許して!」

ストームクロークが街を支配し、人々が最も酷いダンマーへの迫害を行っていた頃、アレティノはこの街から離れて孤児院に居り、戻ってきた時も黒の聖餐を行うために部屋に閉じこもっていた。
だから「灰色地区」の少女がノルドの子供に出会っただけでこうも怯えるのを見ても一向にピンと来ていなかった。


だがようやく、自分がノルドで、少女がダンマーで、その上ここがウィンドヘルムだからこそ、こうも半狂乱になるのだと理解した。
理解はしたが、アレティノもなぜだか傷ついていた。
長らく孤児院で虐げられる身であったアレティノにとって、理由なく他者を、ことさら子供を、傷つける行為は許しがたいものであったのだが、そんな想いも目の前の少女には通じなかった。

「何にもしないよ」

「え……?」

こわごわ見返すダンマー少女。


理解や好意とはほど遠い、疑念と不信の眼差し。やっぱり何だか悲しくなって、でもどうしようもないと自分に思い込ませて、もう何も言わずに道をあけた。


視線を外さずに再び歩き出す少女。
徐々に歩調を早め、やがてすれ違うと後も振り返らずに駆け去っていった。


アレティノもほどなく家に帰り着き、もう今日は何をする気も起こらずベッドに寝転がった。
市場での人々の声。買い物に出た時に聞くともなく耳に入ってきたそれらが、今になって頭の中で蘇りぐるぐると回りだす。

- ダークエルフってねえ、どうも信用できないのよねえ

- 薄汚い灰色ネズミ!

- 帝国が何と言おうが所詮、エルフはエルフさ。厄介ごとの種だ

- ダークエルフめ、いずれこの街から追い出してやる!


胸騒ぎがやまないアレティノは、やがて溜め息をひとつ吐くとベッドから降り、すっかり陽の落ちた街路へと再び出て行った。


∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫



その頃、買い物を終えたダンマーの少女ソニアは、不安気な面持ちでウィンドヘルムの暗い街路を急いでいた。

- おじさんたら、こんな時間におつかいなんて、ダンマー嫌いのノルドに遭ったらどうするのよ……


先ほどノルドの男の子と出くわしてしまったドキドキが未だ止まらない。

- 乱暴されなくて良かった……でもさっきの男の子、何もしないで通してくれたし、それに綺麗な顔してたな……ってやだ私何考えてるんだろう……


考え事で上の空のまま早足で歩き続けたソニアは、大柄な人間の身体に正面からぶつかってしまった。
鼻を押さえて見上げたソニアは、ダンマーを憎む元ストームクローク兵士、今は物乞いのアングレノアが怒りの形相で見下ろしているのを見て、今度こそ絶体絶命の窮地に陥ったことを悟った。


「誰かと思えば帝国のスパイの灰色ネズミめ! 貴様らのおかげでウルフリックから恩給を貰える望みは一生なくなっちまった」

躊躇なく鉄のメイスを振り上げるアングレノア。
紛れもない死の恐怖に直面して必死に逃げようとするソニアは、あっという間に壁際に追い詰められた。



「そこで服を脱げ。さもなきゃお前の頭をかぼちゃみたいに粉々に割ってやるぞ」

帝国軍がウィンドヘルムを支配して以降、ダンマーに対してであれそのような無法な殺人が行われれば決して放置はされない。
だが男の血走った目を見たソニアは、問答は無駄と悟りおそるおそる服を脱ぐ。



「チビの癖に良い乳してやがる」

男はいやらしくソニアの身体を眺め回すと、次は座ったまま後ろ手をつく様に命じた。
怯えながら言う通りに従う。


「もっと身体を後ろに反らせろ!」

男の怒号。ソニアはびくりとして縮こまり、あわてて上体を弓なりに反らせた。



「へへっ、プリンプリンしやがって。たまらねえな」

アングレノアは自らも粗末な衣服を脱ぎ捨て、早くも勃起して先走りの粘液をにじませる黒々とした一物を取り出した。

- また、あれを舐めさせられるんだ……


以前のこと、夜道で乱暴なノルドに脅されて太い肉塊を咥えさせられた挙句にどろどろの精液を顔に浴びた嫌悪と哀しみの記憶が蘇る。


だがアングレノアは、身体を倒してもなお形を崩さないソニアの乳房を両手で脇から挟み込む様にしてつかんで柔肉の谷間を作り出すと、腰を落として固く節くれ立った男根をそこへ突き入れてきたのだ。谷底を刺し通した赤黒い亀頭がソニアの顎の下に顔を出し、思わず顔を背ける。


男は腰のスライドを開始した。ソニアの乳肌は熟れた女の様にしっとりと吸い付くのではなく、艶々と若々しく張り詰めており滑らかに陰茎を擦り上げてくる。


身体を支えるために両手をついた無防備な姿勢。
いやらしい笑みをうかべた男の顔がソニアを見下ろし、その両手と股間のものが良い様に乳房を弄び一方的に快楽を貪る行為に没頭している。


- ひどい……女の子の胸をこんな風に使うなんて……

「心の底から嫌だって顔してやがるな。へへっ、興奮するぜ。もっと嫌がりな」



男は羞恥と恐怖に身悶える顔を眺めながら思う存分に腰を振った。
ダンマー少女を生きた性処理道具として用いたパイズリで滑らかな双乳に挟まれ擦れ合い、肉棒は一層固く膨れ上がった。

「おおっ、いくぜ、ぶっかけてやる!」

最後の瞬間、男は腰を引いて野太い肉筒の狙いを少女の豊かな胸の先端部、望まぬ刺激に健気に反応してピンと尖った乳首へと向けた。



- ドピュッ!

狙いは過たずソニアの右の胸の中心部を熱い濁流の最初の飛沫が直撃した。



ー ビュクッ、ビュクッ、ビュクン……

- 嫌ぁっ、熱いっ!

男は続けて仰け反ったソニアの乳房の谷間へ、その先の顔までも白濁の粘液を勢いよく迸らせた。ソニアは後ろ手についた両腕で上体を支えたまま、遮ることもかなわずにただ全てを受け止めるしかなかった。
だが少女の両腕はついに力を失い、ぺしゃりと崩れる様に倒れ込む。


「ふう、最高の気分だぜ」

男は少女の艶やかな暗青色の肌の上で、盛大にぶちまけた己の欲望そのものがだらりと伝い濡れ光るのを満足気に見下ろしていた。



汚されてしまったショックで脱力して動けない身体の表面を嫌らしい体液が侵食してゆく気持ち悪さにソニアが怖気を震う一方、自らの肉棒と精液で思うままに少女を嬲り者にしたという証を眺める男の欲望は力を得て再び奮い起った。


「こんなのは初めてだ……出したばかりなのにもう一度ぶちこみたくて仕方がねえ」

そう言って少女の両脚を乱暴につかんで強引に引き寄せる。


「今度はこっちにな!」

力づくでは到底かなわない。だがソニアは持てる限りの力を振り絞り、手足をばたつかせて抗った。


「やめて、嫌! お願い、お願いですから……それだけはしないで!!」

悲痛な哀願の声。男はむしろ快くそれを聞きながら少女の脚を力任せに押し広げ、その付け根に慎ましやかに息づく花弁を遠慮なく鑑賞した。


見事に発育した胸とは異なり、こちらは小さな身体に相応しく無毛で作りも小さい。閉じ合わさった花びらを己の膨れ上がった肉棒でこじ開け貫き通す様を思い描くと、得も言われぬ興奮が沸き上がってくる。


雁首で割れ目を探るように上下に数回、往き来させて狙いを定める。少女の身体をしっかりと抱え、ぐっと腰を突き進めようとしたその時。


男の下腹部にピタリと鉄の短剣が押し当てられていた。
これ以上腰を進めれば鋭利な刃が男の身体を切り裂いたであろう。男はビクリと動きを止め、恐々と首だけ動かして短剣を突きつけている相手を見た。


「その子を離せ」

抜ける様に白い肌の少年が、冷たい怒りの表情をたたえていた。



男は空気が抜ける様な声を上げ、ソニアの尻を抱え込んだ両腕を離して解放した。
ソニアは驚きと安堵の表情を浮かべて起き上がる。


「あんたは……アレティノの家の坊っちゃん。いつウィンドヘルムに戻って来たんで?」

「二度とこの子に近づくな。さもないとお前を標的にして黒の聖餐をやるぞ」

男の声を無視して少年は冷たく言い放った。
アングレノアの表情が凶暴で険悪なものに変わり、ソニアは慌てて立ち上がって少年の背後へ隠れる。


「そいつは勘弁してくれ。じゃあな」

男はしばらくの睨み合いの末、そう良い捨ててボロ着とメイスを拾うと手早く身に着け足早に立ち去っていった。

「服を着て」

ソニアは言われる前に拾い集めた服を身に付けていた。
胸元に飛び散った男の体液が布地に染み込んできて気持ち悪かったが、少年の目から素肌を隠したいという思いが勝った。


ソニアは少年の背中におずおずと声をかけた。

「あの……ありがとう」

「うん……」

二人は灰色地区のソニアの家に向かって一緒に歩きながら名乗りあい、語り合った。


少女の名前はソニア。
両親が亡くなったため親戚のアセロンの一家を頼って最近、ウィンドヘルムに来たこと。さっき少年に会った時は怖くて何も言えなかったが、今はとても感謝していること。


少年の名前はアベンタス・アレティノ。
やはり両親が死んでずっとリフテンの孤児院にいたこと。今は他の街で働いているが暫くの休暇で昔住んでいた家に寝泊まりしていること。そしてアベンタスという名前はあまり気に入っていないのでアレティノと呼んで欲しいこと。

やがて灰色地区、アセロンの家の前に着いた。
ソニアは赤い瞳をキラキラさせてアレティノに向き直った。

「アレティノくん……」

「ん?」


- チュッ!

両手をアレティノの首に巻きつけ、不意打ちで音高くキス。
すぐに離れる少女。


「おやすみなさい!」

- バタン!


その場に取り残されて呆然と固まるアレティノ。

「あいつ……」


「キスするならちゃんと顔を拭いてからにしろよ!」

鼻のてっぺんにねばねばしたものが付着したひんやりとした感触とかすかな臭気。
アレティノは慌てて顔をごしごし擦ると、苦笑いを浮かべて家路についた。

1 件のコメント:

  1. 5/30にコメントいただきました方、ありがとうございます、お返事できておらずすいませんでした。
    投稿者名の設定誤りかなーと思いましたため、念のため、こちらでコメントは完全削除しておきますね。

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