2014年4月15日

エリシフ3


人々が寝静まった深夜、ブルーパレスの玉座の間にて、二人の女が対峙していた。
ひとりは亡き上級王トリグの未亡人にして見目麗しきソリチュードの女首長、エリシフ。
今ひとりは歴戦の従士にして色香漂う人妻のブライリング。

玉座の前に立ち上がりブライリングを見下ろしたエリシフは、耐えかねた様に白い喉を震わせて叫んでいた。


「ブライリング、今日という今日ははっきり言わせてもらいます!」





「私はソリチュードの首長として、自分の為したことの結果は良きにせよ悪しきにせよ、自らで受けることを誇りとしています。
それをお前は…あの男が来る度、必ず最後の結果だけを横からかすめ取って…」

切なげな表情を滲ませながら言葉を継ぐ。

「もう、我慢できません! 私を馬鹿にするのもいい加減にしなさい! 今度あの男が来た時、あなたは一切手出しをせずに見ていなさい! 私の誇りにかけて、全てを自分自身で甘んじて受け止め、耐えてみせます!」


ここまで黙って聞いていたブライリング。
やがてその喉の奥から、くくっという声が漏れる。やがて耐え切れない様に大きく声をあげて笑い出す。

「あはっ、あはははっ、エリシフ様、何かお考え違いをされていますわ」

そして自らの首長に真正面から向き直ると言い放った。

「ご主人様の精液をいつも私がお受けするのは、エリシフ様にその資格がないからですわ」


「し…資格…ですって!」


ブライリングは冷然とした表情に変わる。

「ご主人様の精をお受けできるのは、あの方を気持ちよくして差し上げることだけを考えて奉仕できる女のみ…。あなたの様に自分のことだけしか考えていない方は、慰みにお相手をいただくのがせいぜいですわ」


「そんな…だって…あの方は私の…お尻や、お乳や、す、素股で…あんなに気持ち良さそうにされて…」

「ご主人様が一時の気まぐれであなたの身体を使われただけ…。そんなものは奉仕とは言えませんわ」

「それじゃ…いったいどうしたら…」


ブライリングの白い喉から再び、くくっという忍び笑い。心乱されて物思いに沈むエリシフはそれにも気づかない。

ー ご主人様の思惑どおり…


「あらあらエリシフ様、そもそもあなた様は亡きトリグ様に操を立てる身でありながら、ご主人様の精液を注いでいただきたいと願っていらっしゃるのですか?」

「そ…それは…そんなことは決して…」


「エリシフ様、はっきりなさい!」

打って変わったブライリングの一喝。戦場で兵士達を叱咤してきた女従士の鋭い声音に、エリシフの身体がびくりとこわばる。


女従士はエリシフの顔を真正面からぴたりと見据え、たたみかける様に続けて語りかける。

「あなたが、本当に望んでいることをおっしゃいなさい。そうすれば、私が望みを叶えるために必要な手ほどきをして差し上げます。もし言えないのならこれまでです。もうご主人様も、あなたの寝室を訪れることはないでしょう」


「い…や…」

思わずエリシフの唇から、駄々をこねる子供の様な声が漏れ出る。
全てを包み込む様に覆いかぶさってきた、あの黒々と大きくたくましい男の身体。そして彼女の柔肉の中で暴れ狂った、猛々しくも頼もしくそびえ立つ肉幹。
男女の肉の摩擦によりそれが徐々に昂ぶり高まり、耐えてきた欲求をついに吐き出そうとしていたあの時、エリシフは確かに、あの男の肉体と肉棒への愛しさを抱いていたのだった。

「私が自分であの方に…最後までしてあげたい」


「それがどういうことかおわかりですか? ご主人様の精液を注がれて、エリシフ様のお身体は顔も胸もお尻もどろどろに汚されますわ。そしてそれは、お身体の全てがご主人様のものになった証を刻み込まれるということです」


「ああ…」

夫への思慕と責任感だけでソリチュードの首長を務め続けるには、エリシフの心はあまりに弱かった。
亡き者への愛情と追憶だけでは決して満たされることのない、肉体の交わりによる包み込まれる様なあの感覚。自分よりはるかに強く大きな男の身体に、全てを委ね、蹂躙されることで浸ることのできる安らぎ。

「私…あの方にもっとご奉仕したい…そして…気持ちよくなっていただいた証をお受けしたいの…」


「よろしいですわ、エリシフ様」

女従士は自らの使命を果たしたことに安堵し、深く頷いたのだった。


∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫  ∫



仮面の男が部屋を訪れ、エリシフの奉仕のための調教が開始された。

「エリシフ様、まずは誓いのキスですわ。ご主人様の快楽のために身も心も全てをなげうちご奉仕することを宣言して、唇を捧げるのです」


おずおずと男に近づいてゆくエリシフ。

- ピシッ!


「痛っ!」

細い風切り音とともにブライリングの手から鞭が走り、エリシフの身体に鋭い痛みが走る。
痛みは一瞬で退いてゆくが、驚きに目を見開く。


「ひざまずきなさい! そして目の前にあるご主人様の身体に、誓いのキスを捧げるのです!」


かくりと膝が折れてへたり込む様に座り込むエリシフ。
そしてその眼前に…欲望にたぎり脈打つ灼熱の剛棒が突き出された。しかもこの男にしては珍しいことに、行為前であるにも関わらず鈴口から先走りの透明な粘液を滲み出させている。



得るものがあればまた失うものがある。まがりなりにもソリチュードの為政者であるエリシフはそのことを十分に理解していた。
この心を包み満たしてもらうために、亡き夫への思慕の念も、首長としての自尊心も、全てが踏みにじられ蹂躙される。そんな想いすら、今のエリシフには期待を伴って背筋をぞくぞくと震わせる甘い痛みと化している。



「私、亡き上級王トリグの妻にしてソリチュードの首長エリシフは、ご主人様の快楽のために持てる全てを捧げ、仕えることをここに誓います」

迷いのないまなざしで言い切ると、エリシフの高貴なる顔貌が、涎のごとく先走り液を滴らせる肉柱に寄せられる。


ー チュッ!

男性自身の象徴へ屈服と隷従の契約のキスが、音高く交わされた。


かくして、ソリチュードの高貴なる宝石、誇り高き生粋のノルドの女首長は、仮面の男の肉奴隷に堕ちたのだった。

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