2013年10月8日

リディア1



ホワイトランの従者リディア。
ドヴァキンに早くから仕え支えてきた彼女だが、実のところその想いは複雑だった。

ドヴァキンはインペリアルの男だった。
そうなるとは思っていたが、結局のところストームクロークを倒し、スカイリムを帝国の手に明け渡してしまった。
無論、ドヴァキンはアルドゥインを倒し世界を救った偉大な英雄であり、その卓絶した力が帝国とストームクロークの争いにもけりをつけ、戦乱に疲弊していく故郷の地に平穏をもたらしたのは事実だ。
ホワイトランの首長バルグルーフも、帝国の元での安定・繁栄が必要だと考えたからこそ、リディアをドヴァキンに付けて、協力させた。


リディアはノルドの女だ。
本当は、スカイリムはノルドの手に取り戻すべきだと考えているし、ストームクロークに共感する心情もあった。
そんな気持ちを押し殺し、ドヴァキンに従ってホワイトランでもウィンドヘルムでも両手斧を振るい、数々の同胞を手にかけた。

自分は、スカイリムを帝国に渡した男に仕えている。
そんな想いが耐え難い恥辱となってリディアを苦しめることがあった。

だが、ドヴァキンには逆らえない。
絶対服従。いざその前に立った時、それ以外の選択肢はなかった。
世界を救うのみならず、盗賊ギルドのギルドマスターにおさまり、闇の一党を従え、事実上、スカイリムの裏社会を牛耳ってしまった圧倒的な強さと行動力。

それにあの眼光、あの声。
シャウトを放つのを見たことはそう多くないが、有無を言わせぬ深みを帯びたその声で何かを命ぜられると、軽い震えを覚え、従わないわけにはいかないのだ。特に厳しい命令であればあるほど、ぞくっとする感じが背中を走る。

そして今日、ドヴァキンはリディアをウィンドスタッド邸の地下に呼び出した。
「御用でしょうか、従士様」





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